話のかけら

あぁ…ここに人が来るなんて珍しいですね。
もうかれこれ１０年ぐらい来ていないような気がします。
正確には私が気がついてから初めて会う人です。

何で私がここにいるかって？
さぁそれを一番知りたいのは私なのです。

気がついた時、私は狭い部屋の中でした。
どうにかこうにかそこから抜け出しはしたのですが
私以外には誰も居なかったのです。

この建物は学校なのか、教室や図書室、食堂もあり
一人でいるのもさほど困りはしなかったのです。

はい。この建物から出ようとは思いませんでした。
自分でも分からないのですが、何か大事なものが
ある気がして、出ようと思えないのです。
それに実を言うと、自分が誰なのかも分からないのです。

１０年間ずっと探し物をしていました。
自分が無くしてしまったモノが何かを。

おや？何で泣いているのですか？
そういえばあなたにどこかで会った様な気がするのです。


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１０年ぶりに学園を訪れた。

まだ各地で暴動はあるものの、昔に比べたら小規模だ。
僕は仲間への報告も兼ねて学園を訪れたのだ。

玄関ホールへ入ると人の気配があった。
暴動派かと警戒したが
その姿に違う意味で絶句した。

そこには１０年前と変わらない姿で
彼が立っていた。


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その人は泣きながら
もう休んでいいんだよと言った。

あぁそうか。
私は…僕は…
僕はそうだあの日
そうだったね。

僕の探し物はもうここには無かったのだな。
あれから世の中はどうなったのだね。
君の事だからきっと良い方向へ向かっているのだろう。

今日は良い日だ。
僕は休むことにしよう。
君はどうか元気でいてくれたまえ。